形成外科、美容皮膚科でよく使われる“Rejuvenation”という用語があります。
辞書には、
re・ju・ve・na・tion
/r

d



v

n




n/



[また a ] 若返り,回春,元気回復
と書かれています。つまりRejuvenationは若返り治療のことです。
Facial Rejuvenationは「顔の若返り治療」と言うことになります。
私が専門にしている分野は、まさしくこの「顔の若返り治療」なのですが、
その原点になる1冊の本があります。1987年発行の「Facial Rejuvenative Surgery」
有名な形成外科医Bernard L.Kaye先生の著作です。(http://www.jacksonville.com/tu-online/stories/031608/met_258271208.shtml)
私が形成外科の研修医時代に初めて買った美容外科の教科書です。
(美容外科は形成外科の一分野と考えられています。)
この本のほとんどのページは、フェイスリフト手術の解説で、ほんの少しだけ、ピーリングと皮膚を削る手術(アブレーション)について書かれています。もちろん形成外科の手術本なので当たり前と言えば当たり前ですが、
20年前には、若返り治療といえば、手術しかなかったのです。
ところが、今の若返り治療は、レーザーや高周波、ボトックスやコラーゲンなど非手術療法が主流です。私もいつのまにか、手術よりもサーマクールなど非手術療法の専門家となってしまったようです。先日学会である著名な美容外科の先生から、「先生、もう切らないんだってね。もったいない。」とお言葉を頂きました。ありがたいお言葉と思う反面、心の中で「時代ですよ。」とつぶやいてしまいました。 圧倒的に世間の需要は非手術だからです。
研修医の頃、心躍らせたあこがれのフェイスリフト手術も、いつの間にか、そこそこお上手にこなせるようになり、今は、手術なしに手術のような効果の治療はないか、日々奮闘しているのです。そして、それが現実のものとなりつつあります。
ただしフェイスリフト手術で得た技術や知識は、無駄になっていません。むしろ絶対に切らないと解らない、皮膚の構造や生理というものがあります。我々形成外科医は、外傷や手術に対する皮膚の反応を、肌身をもって理解しています。
サーマクールやボトックス、ヒアルロン酸注入など切らない治療すべてにも、実践的解剖学的知識と皮膚反応に対する勘どころがとても重要です。
「切らない治療」は「切れない治療」ではないのです。
消極的に切らないのではなく、
「むしろ積極的に切らない治療」なのです。
面白いもので、20年前の教科書Dr.Kayeの手術本を見直して、サーマクールやウルセラの新しい照射のヒントを見つけました。 温故知新