有名と言っても、テレビなどで活躍する女医さんではなく、私も尊敬する
本物の形成外科医です。 色々ためになる話を聞くことが出来ましたが、
中でも心に残っている話が、赤あざ治療についてです。
赤あざは、病名で「単純性血管腫」「ポートワイン血管腫」と呼ばれますが、先天的にあるものです。
このような生まれながらのあざは、よく色で簡潔に区別して呼ぶのですが、それぞれ病名があります。
顔面に出来る青あざは「太田母斑」、全身にできる茶あざは「扁平母斑」
ホクロの大きなものは黒あざで「母斑細胞母斑」です。
形成外科の外来には、このような疾患を持つ子供たちがたくさん来られます。
私がちょうど医者になった頃に、レーザーの進歩により、それまで治療が難しかった赤あざ「単純性血管腫」と青あざ「太田母斑」の治療が飛躍的に進歩しました。
私の最初のお師匠様、新井克志先生はレーザー治療のパイオニアの一人でしたので、
当時の形成外来には、今では到底見ることも無い、絶滅機種「アルゴンレーザー」がありました。当時、赤あざ治療はアルゴンレーザーが最新の治療で、太田母斑もまだドライアイス療法や皮膚移植で治療している時期でした。
たぶん私くらいの形成外科医が、最後にアルゴンレーザーを見た世代かもしれません。
ほどなく外来に、巨大な「色素レーザー」なる黒船がやって来ます。
今日からアルゴンレーザーはすべて止めて、血管腫はこの色素レーザーで治療します。
と言うことになりました。
青天の霹靂、今までの治療がすべて否定された瞬間です。
太田母斑の治療は、その後QスイッチYAGレーザーにとって変わられます。
ただし、レーザーの世界では、良くこんなことが起きます。
新しく、より良い治療法が出れば、それまでの治療法は一瞬で過去になります。
今でも、私が新しい機器に気を引かれるのは、この原体験のせいかもしれません。
もっと良いものがあるかもしれない。と常に思ってしまうのです。
今でも、たまに大ヒットがあるので、止められないのが現状です。
話は戻りますが、この進歩したはずの赤あざ治療が危機に瀕しています。
子供の赤あざ治療は保険適応があり、高額な医療費をかけなくても保険で治療が出来るのですが、 保険適応になるレーザー機種が、その当時の古い機種のみで、最新のレーザーでは正式には保険適応が無いそうです。
また、レーザー機器は購入費用が高額で、赤あざの治療のみでは,病院経営は赤字になってしまうため、年々、治療する病院自体が減っているとの事でした。
私自身は、今現在、保険治療を一切していないため、あまり事情がわかっていなかったのですが、
悲しいことです。
それなら、お前がやれ!と言われるかもしれませんが、難しい。
何とか、最新の機種でも保険適応できるように、厚労省さん認めてもらえませんかね。
それなら、私も出来るかもしれません。
20年前、午後のレーザー外来で同級生の先生と、「おー!これはすごい!」と当時最新の色素レーザーを得意満面で打っていたのを思い出します。
今があるのも、そのおかげですから。