東洋医学、鍼灸の考え方に本治と標治と言う考え方があります。
本とは、正気、病因、先病、内にある病を指し、
標とは、邪気、病状、後病、外にある病を指します。
簡単に言えば、本とは疾病の本質であり、標とは疾病の現象です。
疾病の本質に対処する治療を「本治法」と言い、
疾病の現象に対する治療を「標治法」と言います。
西洋医学で普通に言えば、
腹痛で来院された患者さんに対して、痛み止めの注射で、痛みを楽にしてあげるのが標治法、対処療法です。検査により痛みの原因を精査し、たとえば原因が腫瘍であれば、手術で取り除くのが本治法、根本治療となります。西洋医学は科学なので、原因が解り、理論が通じれば、治癒できます。
鍼灸では、 痛みのあるその部位や周囲に鍼を打って、痛みを取るのが標治法で、
体の不調を、体全体で捉えて、全身的に不調を鍼で整えて行くのが本治法になります。 原因のはっきりしないもの、そもそも治癒することが出来ないものに効果を発揮します。
さて、美容治療は標本どちらなのでしょう?
私が日常扱う症状は、しみ、シワ、たるみ、など加齢による
皮膚の美容的劣化状態なのですが、治療のほとんどが標治から始まります。
たとえば、しみをレーザーで取ったり、ボトックスやヒアルロン酸でしわを目立たなくすることは、とりあえずは標治法になります。
レーザーで色を取っても、皮膚本体が若返ったわけではありません。
それに対して、サーマクール、ウルセラ、フラクセルなどの
熱治療は本治法になりえます。
最初は、たるみや毛穴に対する標治法なのですが、これらの治療は続けていくと、
皮膚そのものを良い状態、 若返った状態にしていくことができます。
そもそも、サーマクールなどはアメリカで開発された、西洋的、論理的、科学的治療ではあるのですが、効果は案外東洋医学的です。
ただ、効果が本物になるには、少なくとも半年、
2年3年かかる場合もあり、時間を要することが難点です。
初診の患者様に、いきなりこのような話をすると、中には、そんなには待てないと怒って帰ってしまう人もいます。
ですから、信頼関係のない初診の患者様には、まず標治法が多くなります。
それでもアンチエイジング治療は、やり方さえ良ければ、一時的な標治も継続により、
本治に近い効果になります。
信頼が得られれば、時間をかけて徐々に治療を本治中心に移行していきます。
開業して12年、今は定期的に本物のアンチエイジング治療で本治法を行っていただける患者様が多いので、気楽です。
中国古典「素問」より
急則治標、緩則治本
「急であればその標を治し、緩であればその本を治す。」
治病必求干本
「病を治すには必ず本を求める。」
中国古典恐るべし、数千年前の理論が最新の科学的アンチエイジング治療も飲み込んでしまいます。